はじめに
「手数料ってたったの数%でしょ?あまり気にしなくていいんじゃない?」
もしそう思っているなら、この記事を読んでから判断してください。投資における“手数料”は、実は「見えにくいけれど非常に重要なポイント」です。
特に長期投資を前提とするインデックス投資において、手数料の差は“資産の差”に直結します。
この記事では、投資初心者に向けて「なぜ手数料が重要なのか」「どんな種類があるのか」「どうやって比較すればいいのか」などをやさしく解説します。
さらに、過去と現在のファンド手数料の変化や、10年保有時の差額シミュレーションなど、具体的な数字を交えて解説していきます。
手数料が投資の成果に与える影響とは?
投資信託における手数料は、見えにくいからこそ無視されがちですが、長期間に渡ると“雪だるま式に資産を削っていく”厄介な存在です。
仮に同じ年間リターン5%のファンドが2つあったとしても、手数料が0.5%か0.1%かで20年後のリターンは大きく変わります。
実際に手数料の違いで、数十万円、場合によっては100万円以上の差が生まれることも珍しくありません。
投資信託・ETFでかかる主な手数料の種類
初心者がまず押さえておきたい手数料は以下の3つです。
1. 購入時手数料(販売手数料)
購入時に証券会社や銀行に支払う手数料。近年は「ノーロード(無料)」が一般的です。
2. 信託報酬(運用管理費用)
保有している間、ファンドに対して支払う運用コスト。資産残高から毎日少しずつ引かれます。
3. 信託財産留保額
解約時に一定の金額を控除されるケースもありますが、最近ではこれを設定していないファンドが多くなっています。
ETFの場合は売買手数料も別途かかりますが、今回は初心者向けということで割愛します。
初心者は「信託報酬」に最も注意すべき理由
信託報酬は、投資信託を保有しているだけで毎日自動的に差し引かれていく「見えないコスト」です。
この報酬は「年率○%」と表示されますが、実際には資産残高に応じて毎日コツコツ差し引かれるため、地味ですが確実に資産の成長を削っていきます。
たとえば、0.5%と0.1%の信託報酬の差はたった0.4%に見えますが、これが20年積もると大きな差になります。
【回顧録】10年前のインデックスファンドはどうだった?
今でこそ「eMAXIS Slimシリーズ」や「SBI・Vシリーズ」のように、信託報酬が0.05〜0.1%の格安ファンドが当たり前になりましたが、10年前は全く違いました。
2010年代前半、インデックス投資家が選べる選択肢は非常に限られていて、当時の代表格だった「eMAXISシリーズ(Slimではない)」でさえ、信託報酬は0.5〜0.6%程度でした。
しかも、全世界株式(オールカントリー)に投資できるファンドなど存在せず、MSCIコクサイ連動やTOPIX連動型が主流だったのです。
いかに現在の「Slim全世界株式(オルカン)」が恵まれた商品かがわかりますね。
現在のオルカン vs 仮想「旧型オルカン(信託報酬0.55%)」の比較
それでは、信託報酬0.05775%(税込)のeMAXIS Slim全世界株式(オルカン)と、昔ながらの信託報酬0.55%のファンドを比べた場合、20年でどれくらいの差が出るのでしょうか?
【シミュレーション条件】
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毎月の積立額:3万円
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投資期間:20年間
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年平均リターン:5%(税引前、信託報酬差分を反映)
【結果】
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Slimオルカン(信託報酬0.05775%): 約1,233万円
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旧型オルカン(信託報酬0.55%): 約1,070万円
→ 差額:約163万円
信託報酬の差だけで、20年後に163万円の差が生まれるのです。これは「何もしなくても手数料で失っていたお金」だと思うと、かなり衝撃的ですよね。
手数料の比較方法と見るべきポイント
初心者が手数料を比較する際に見るべき場所は、次の2つです。
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目論見書(もくろみしょ):商品の詳細や手数料の概要が記載
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ファンド情報ページ(証券会社のWebサイトなど)
検索時のポイント:
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「信託報酬0.1%以下」を目安にする
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「eMAXIS Slim」「SBI・Vシリーズ」「楽天・全米株式」などのシリーズ名を覚えておく
証券会社の比較機能や、モーニングスター・投信まとなびなどのサイトを活用すれば簡単に比較可能です。
コスト重視のおすすめファンド3選(2025年版)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
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信託報酬:0.05775%(税込)
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これ1本で全世界の株式に分散投資可能
- 通称:オルカン
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
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信託報酬:0.0938%(税込)
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米国を代表する500社の指数=S&P500に連動。VOOに近いパフォーマンス
- SBI証券の専売ファンド
楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド
- 信託報酬:0.077%(税込)
- 2023年登場の楽天証券専売ファンド。S&P500連動で超低コスト、SBI・Vシリーズに対抗する実力派。
手数料が高い商品にありがちな特徴
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毎月分配型(毎月利益が出るように見えるが、元本取り崩しも多い)
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アクティブファンド(運用成績が市場平均を上回ることを目指すが、手数料が1%以上のことも)
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テーマ型ファンド(AI・宇宙・EVなど、人気テーマに便乗した商品)
これらのファンドは、広告や銀行の営業トークで勧められることもありますが、手数料が高い上に中身が偏っているため、初心者にはおすすめできません。
実例:手数料の違いでどれだけ差が出る?
【条件】
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毎月3万円を20年間積立
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年平均リターン:5%
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比較対象:信託報酬0.1%と1.0%のファンド
【結果】
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信託報酬0.1%ファンド: 約1,190万円
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信託報酬1.0%ファンド: 約1,000万円
→ 差額:約190万円
つまり、「年0.9%の手数料差」があるだけで、約200万円近く将来の資産が削られるというわけです。
まとめ:手数料は“未来の自分の財布から毎日こっそり抜かれているお金”
投資初心者にとって、手数料は見えにくいからこそ無視しがちなポイントですが、これこそが長期投資の成果を左右するカギです。
昔は仕方なく高コストのファンドを買うしかありませんでしたが、今は違います。最初から良質で低コストな商品を選ぶだけで、数十万円〜数百万円の差が生まれます。
投資をするうえで、何を買うかと同じくらい、「いくら取られるか?」にも意識を向けましょう。
最後に、こうした知識を身につけたあなたは、すでに「手数料に気づける投資家」です。
これからの資産形成の第一歩として、“低コストファンドで堅実な積立”を始めてみてください。
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